ヴィンテージサックスについて

かつて、15年前くらい前までの、日本ジャズサックスの世界では、ヴィンテージサックス(オールドサックス)が大変な人気で、盛んに売買されていました。ヴィンテージサックスというのは、現行のモデルよりも何世代も以前に販売されていたモデル、要するに、1930年~60、70年くらいの間、ジャズ黄金時代のジャズマンたちが実際に使用していた楽器のことを言います。

音色が違う!

今から30年~15年前の頃、新品で販売されていたサックスは、ほとんどがクラシック吹奏楽での使用に適したものでした。アルトサックス、テナーサックスの何れも、クラシック系奏者の要望、つまりマイクを使わないコンサートホールでの演奏時、音の響きが良好になるような方向を目指して改良されてきた楽器が、各メーカーのラインナップに並んでいたのです。

もちろん、ジャズ・ポピュラー系ではマイクの使用を前提とし、もっと狭い空間での演奏時に良い音がするサックスが好ましいわけで、当時のジャズサックス奏者は(私もその中の一人)、現行の楽器の中に自分が使いたいものが無い、という寂しい状況下に置かれていたのです。

その結果、よりジャズ演奏に適したオールドサックスを求めて、中古市場での出物を探すのが、ジャズサックス吹きにとって常識になっていました

82zの衝撃!

YAS-82z
YAS-82z

しかし、そんな状況は、ヤマハからジャズ演奏に適した「Zシリーズ」が販売されたことで、大きく変化しました。

 

サックスの場合、82zとして、アルト、テナーの各モデルがラインナップされ、しかもジャズサックス吹き好みに音色が渋くなる「アンラッカー仕様」、そして音の抜けが良くなる「ハイFisキーレス仕様」が選択できることとなりました。

オールドサックスの扱いにくさ(キーアクションが独特だったり、ピッチにも癖がありました)に辟易していた私、鈴木学は、すぐに飛びつきました。アルト、少し遅れてテナーも、試奏後すぐに気に入り導入決定!その後今も変わらず愛奏しています。

吹きやすい楽器が最高!

当時、このモデルを導入していたフィル・ウッズさんの素晴らしい音色を聴けば、オールドサックス云々の議論は意味をなさなくなったのがお分かりいただけると思います。

今でもオールドサックスでの演奏にこだわっている人の中には、黄金時代のサックス奏者と同じモデルを使用したいから、という理由を口にする人がいます。しかし実は、彼らがその楽器を使っているのは、入手する際、当時の現行品だったからなのですよね。少なくとも「オールドだから」という理由で入手した奏者はいなかったのです。

今では、ヤマハの82z以外にも、様々なメーカー、ブランドからジャズ演奏に適したモデルが発売されています。だから現代のジャズサックス演奏愛好家は、それらの中から自分の好みに合った音色のモデル、吹きやすい楽器を選択するのが良いです。私の修業時代と比べたら、良い時代になりましたね~